天の川銀河の星めぐり

天の川銀河の天体を、天体望遠鏡で見た感じにコリメート撮影で星めぐり中です。

赤い星 こと座T星 

こと座T星の位置(矢印)        標準星図2000 中野繁 地人書館より

※こと座T星という「すごく赤い星」があると前に読んだことがあり見てみました。

色々調べた結果、Webでは写真も資料を発見できず、唯一上記の星図とバーナムの「星百科大辞典」の変光星のリストに位置と「極赤星」という記載があるのみでした。

 

こと座T星(中央赤い星)2023.10.12  20cm反射83倍コリメート2秒露出+LX7デジカメ

※上の写真はほぼ望遠鏡で見た通りに写りました。着色もしてありません。

宇宙に赤い梅干しが浮かんでいるようです。

資料が無いのでなぜ赤いか不明ですが、

・星の進化の末期の赤色巨星?(オリオン座のベテルギウスの様?)

・炭素が多く赤く燃える「炭素星」?

原因は不明です。

小さな望遠鏡でも良く見えるので一度みてください。ベガ(織姫星)のすぐ南です。

参考に2000年分点の位置は 18h32m20s +36°59’56”です。明るさ7.5~9.2等

ニュートンの反射望遠鏡

やっと以前から欲しかった「ニュートン反射望遠鏡のレプリカ」を手に入れました。

学研の「大人の科学」の付録ですがヤフーオークションで見つけました。

スマートホン程の大きさですが、実際にのぞける本物の作りです。

 

私の持っている天体望遠鏡は反射式が多いです。それは口径のわりに価格が安くおてごろだからです。そんなことから世界で初めて反射望遠鏡を作った「ニュートン反射望遠鏡」が欲しかったのです。

初めて公表されたのは1671年ですから今から350年ほど前ですが、今でも最新鋭の天体望遠鏡は反射式がほとんどですからすばらしいものです。

 

実際にこのレプリカで景色と月を写してみました。

ニュートンが見た感じはこのようなものだったのでしょうか。

上弦の月」 目で見るとクレーターが見えましたが写真では模様しか写りませんでした。

紫金山-アトラス彗星(C/2023A3)

2023年7月6日、MPC(米国、小惑星センター)の「NEO(地球接近天体)確認ページ」に新発見された天体「A10VOwR」の情報が掲載されました。

明るさ、位置共に私のシステムで撮影できそうな為、早速撮影(下の写真)し観測位置データをMPCに報告しようとした矢先、この天体が既知の新彗星であったと確認ページが変更されていました。

この彗星こそ今回取り上げた「紫金山-アトラス彗星」でした。

紫金山-アトラス彗星(矢印) 2023.07.06 20cmF5反射+CMOSカメラ 24秒 (白黒反転

※この彗星は2022年12月中国の「しきんざん天文台」と南アフリカの「ATLAS望遠鏡」

がすでに発見していました。当初は軌道の離心率eが1以下で楕円軌道と思はれていましたが、観測データが増えてeが1以上の放物線軌道で、おそらく今回初めて太陽に近づく大きな核を持つ大彗星になるのでは、と考えられています。

来年の秋、―1等級で都会でも肉眼で見れるほどの大彗星になるかもしれません。

そのような大彗星が日本で見られれば1997年春の「ヘール.ボッブ彗星」以来です。

C/2023A3光度予想((2024年10月初旬マイナス1等)astro.vanbuitenen.nl/cometより

※このような大彗星はどこからくるのでしょう?

今までの観測からわかったのは、このような大きな彗星は太陽から1光年以上も離れた所にある「オールトの雲」と呼ばれる小天体が多く集まる球状の部分から来たものと考えられています。

ただ初めての太陽接近のため光度の予測がむつかしく、過去にも1989年のオースチン彗星の様に最大ー2.5等といわれたものが実際は4.5等までしか明るくならなかったこともあります。時々上記の光度観測グラフを確認したいものです。

※太陽のような恒星の大部分は二重星です。そこで太陽とペアのもう一つの星は光で見えない褐色矮星がこのオールトの雲の中にあり、その星の影響で時々大彗星が太陽に向かってくるという説もあります。

※紫金山-アトラス彗星どの様なコースをたどるのでしょう?

現在の位置(2023年8月)は木星軌道を入ったあたり(矢印)                  NASA/JPL Small-Body データベースに加筆

太陽と地球に最接近時の彗星の位置(矢印)                  NASA/JPL Small-Body データベースに加筆

※2024年の秋、どのように見えるのでしょう?

1997年3月 明け方の空に見えたヘール.ボッブ彗星 Nikon 55mmF2 30秒固定

※日本で見えた最後の明るい彗星。光度は0等だった。

 紫金山-アトラス彗星は更に明るいー1等予報なので、これより素晴らしい彗星が見られればと期待してしまいます。

惑星状星雲 M27(あれい状星雲) (こぎつね座)

夏の天の川とМ27(矢印)  2019.8.26 Canon10mmF3.5 15S 奥三河総合センターにて

※夏の天の川の真っただ中に惑星状星雲「М27 あれい状星雲」があります。

昔、惑星の様に見える天体ということで「惑星状天体」と呼ばれ、色々な形があることからМ27は形が「鉄アレイ」に似ていることから「あれい状星雲」とよばれています。大きさ、形、色合いなど人気の高い惑星状星雲の代表です。

М27 2023.07.23 20cm反射(24倍)コリメート撮影+10秒露出+QBPフイルター

М27拡大 2023.07.23 20cm反射直焦点+白黒CMOSカメラ+160秒露出+UV/IRカット

※星雲の中心にある星は「白色矮星」で質量は太陽の半分、直径は5.5%ですが、表面温度は約11万度ある(太陽は約6千度)超高温星で、強力な紫外線を放出しています。

地球からの距離は1200光年で年齢は1万年です。

М27誕生のイラスト

※М27の詳しい説明は「天文ガイド」誌 2023年9月号

また惑星状星雲の詳しい説明は「天体写真でひもとく宇宙のふしぎ」

 サイエンス.アイ新書を参照してください。

M16(わし星雲)とM17(オメガ星雲)  (いて座)

いて座~たて座の天の川には明るい散光星雲がいくつかあります。

どれも赤い星雲と美しい星団と暗黒星雲から成り、夏の星空の楽しみです。

ここは星の誕生の場所でもあります。

南からМ8(干潟星雲)、М20(三裂星雲)と今回のМ17、М16がありますが、

М8とМ20は以前のブログで紹介しました。

矢印の位置にМ16とМ17がある     「藤井旭の星雲・星団教室」誠文堂新光社より

М16(わし星雲)

М16 2023.7.23  20cm反射(24倍)LX7コリメート撮影+QBPフィルター10秒x3枚

※赤い散光星雲がМ16で,北側の星団がNGC6611。地球からの距離は4600光年

М16 2023.7.23  20cm反射F5直焦点 白黒CMOSカメラ+IR/UVカット 5分露出

※左下向きに飛ぶ「わし」の形に見える。中央にハッブル宇宙望遠鏡の写真で有名な、

3本の指を立てた様な暗黒星雲の「創造の柱」が見える。星が生まれつつある場所である。

 

М17(オメガ星雲)

М17 2023.7.23  20cm反射(24倍)LX7コリメート撮影+QBPフィルター10秒x3枚

※満月ほどの大きさの散光星雲で望遠鏡を通し肉眼でも星雲が良く見える。

ギリシア文字のΩ(オメガ)に形が似ているが、「白鳥星雲」の方がイメージに合っているように思える。地球からの距離は4200光年である。

 

※この二つの星雲は、空の暗い所で双眼鏡で良く見えるので、最初の星図を頼りに

 チャレンジしてみてください。

いて座~たて座の天の川(暗黒星雲をめぐる)

天の川銀河外観                       MITAKAで作成

※夏の天の川は太陽系から見るといて座の方向に中心があり、天の川がもっとも濃く見えるところです。そのため暗黒星雲もいろいろ楽しめる場所でもあります。

当ブログの天の川を撮影した「写真―1」と「写真―2」の位置

「写真―1」いて座の天の川    撮影データ不明 愛知県奥三河・御園で撮影

「写真―1」の説明 

・パイプ星雲(暗黒星雲):全長7度に及ぶパイプのような形の巨大な暗黒星雲。正体は光を発しない星間物質(塵とガス)で、後ろの星をシルエットの様に覆い隠す。やがてここから星が誕生する。地球からのキョリは約430光年と以外に近い。恐竜絶滅の原因が巨大隕石落下の他に、暗黒星雲の太陽系通過説もうなずける。

 

天の川銀河中心方向:この方向やく2万8000光年先に我が天の川銀河の中心がある。

・インクスポット(B86):インクを一滴宇宙に落としたような暗黒星雲。バーナード86というカタログ番号がつく。

 

・仔馬の横顔:左斜め上を向いた仔馬の横顔のような星のかたまり。暗黒星雲に縁どられてこのかたちとなっている。目や鼻や首筋にあたるところが暗黒星雲で、目はB92番である。

「写真―2」いて座~たて座の天の川    撮影データ不明 愛知県奥三河・御園で撮影

※写真上の方の天の川の明るいところが「たて座のスタークラウド」と呼ばれる星の密集地。いて座から淡くなった天の川がここで明るさを増している。


 

春の銀河めぐり(からす座~おおぐま座)

春の星座と銀河 Canon10mm 2020.6.16 F3.5x25sec 奥三河総合センターにて

※春の夜空は天の川が見えなく寂しいですが、その分遠くの天体が見通せる季節でもあります。上の写真にはこれから見ていく銀河が示してありますが、よく見るとほぼ一直線に並んでいるのがわかります。この写真から太陽系の惑星の配置のような、天の川銀河を含む数々の銀河で構成される「宇宙の大規模構造」がわかります。

※これらの銀河は色々なかたちをしていますが、1926年~1936年米国の天文学者ハッブルは近傍の銀河の写真を元に下図のような銀河のかたちの分類を作り今も使われています。

これは銀河の進化を示すものではないが、どのような物理特性を持つか研究されている。

ハッブルが作った銀河の型の音叉状分類      Wikipediaより

※それでは南の空の低い位置の「からす座」から見ていきます。

 銀河にはそれぞれ「愛称」が付けられています。また写真の画角はすべて同一のた  め、銀河の見ための大きさが比べられます。

 

NGC4038/39(アンテナ銀河、触覚銀河)

(からす座、距離6800万光年、NGC4038はSB(S)型、

NGC4039はSA(S)型)

NGC4038/39 2023.05.16 20cmF5反射直焦CMOSカメラ+IRパスフィ330秒露出

※銀河どおしの衝突の途中の例。写真には写っていませんが、星間ガスや塵の長いしっぽがみられます(下のイラスト参照)

衝突のシュミレーションでは約12億年前は別々で9億年前に接近し3~6億年で今の形になり、あと4億年で1ケの銀河になる。

NGC4038/39のイラスト

M104(ソンブレロ銀河)

おとめ座、距離5000万光年、SO/Sa型 楕円銀河+円盤)

M104 2023.04.22 20cmF5反射直焦点CMOSカメラ+IRパスフィルタ340秒露出

※大きな暗黒帯の輪(バルジ)を持つ渦巻銀河と考えられていたが、現在は楕円銀河の中に円盤が収まった複雑な構造を持つと考えられている。

 

M64(黒眼銀河)

(かみのけ座、距離1700万光年、Sb型 渦巻銀河)

M64 2023.04.22 20cmF5反射直焦点 CMOSカメラ+IRパスフィルタ340秒露出

※М天体(メシエ天体)の中で実質2番目に大きな銀河である。

 中心から少し離れた所に目立つ暗黒帯があり、眼のように見えるところから「黒眼銀河」と呼ばれている。

 

NGC4565(ニードル銀河)

(かみのけ座、距離3000~5000万光年、SA(s)b?型 渦巻銀河)

NGC4565 2023.04.22 20cmF5反射直焦CMOSカメラ+IRパスフィルタ360秒露出

※真横から見た銀河として有名。側面が狭いためニードルと呼ばれている。

 

M63(ひまわり銀河)

(りょうけん座、距離約2700万光年、SA(rs)bc?型 渦巻銀河)

M63 2023.05.09 20cmF5反射直焦点 CMOSカメラ+IRパスフィルタ360秒露出

※私たちの天の川銀河と同じくらいの大きさ(直径約10万光年)

 

M51(子持ち銀河)

(りょうけん座、距離約2300万光年、SA(s)bc型 渦巻銀河)

M51 2023.04.26 20cmF5反射直焦点 CMOSカメラ+IRパスフィルタ310秒露出

※近くに伴星雲があることからそう呼ばれている。

 渦巻の構造が見やすいことから人気の銀河。

 

M101(回転花火銀河)

おおぐま座、距離約2700万光年、SAB型 渦巻銀河)

M101 2023.05.21 20cmF5反射直焦点 CMOSカメラ+IRパスフィルタ240秒露出

超新星 2023ixf 発見から2日後の写真。光度は14等。

 詳細は5月のブログを見てください。

 

M109

おおぐま座、距離約2700万光年、SB(r)bc型 棒渦巻銀河)

M109 2023.05.16 20cmF5反射直焦点 CMOSカメラ+IRパスフィルタ300秒露出

※北斗七星のひしゃくの3番目の星のすぐきわにある、淡い小さな銀河で愛称もなくかわいそうですが、実は私たちの天の川銀河と同じ「棒渦巻」の形をしています。

 天の川銀河も遠くから見るとこの様な形をしています。

 

色々な形の銀河を見てきましたが、銀河は衝突・合体がよく起きている生物の世界の場合と同様、銀河の現在の形態は生まれと育ちの両方の効果の結果なのであろう。